社長からの手紙
対・熱中症一番勝負の夏2013/08/1
先月下旬に富山県黒部峡谷の黒部第四ダム発電所の見学に行ってきました。黒四ダム開所50周年に際し関西電力のお世話で、普段観光客は立ち入ることのできない地下水力発電所を見てきました。地下発電所へは富山県宇奈月温泉駅からトロッコ電車で黒部川山腹を縫って登って行きます。作家吉村昭の小説『熱中隧道』でも有名になった人力掘りトンネルは、ヘルメットをかぶって通過しなければなりません。このトンネルは戦争中の昭和14年頃に完工したもので、貫徹までに171名の工事殉職者を出しています。温泉蒸気の噴き出す中、気温100度を超える炎熱地獄の作業だったそうです。一方、戦後の昭和30年代に着工した黒部第四ダム建設のための大町トンネル工事は、氷冷水に阻まれ気温4度という厳寒の作業になりました。黒四ダム完工までに340名以上の労働者が犠牲となっています。この物語は石原裕次郎が映画『黒部の太陽』で鎮魂活写しています。 いま原発停止問題で夏場の電力逼迫が取り沙汰されています。生産工場の電気料金高騰ももちろん深刻ですが、家庭の電気代だってたいへんです。高齢者は、律儀にクーラーを止めて節電しています。その結果、熱中症になって救急車を呼ばなければならないという悪循環も増えていますね。私たちの職場だって例外ではありません。草刈作業や貯水槽清掃など屋上作業での直接熱射はもちろんですが、冷房が止められたビルの屋内作業も熱中症の危険がいっぱいです。水力発電はその効率の低さから今の時代ではお払い箱になりつつありますが、昭和の先人は日本国の生産や国民の生活を守るために大きな犠牲を払って電気を作り出してくれました。今の時代を生きる私たちは、電気のありがたさと怖さをもう一度振り返ってみなければならないと思った“黒四ダム発電所”の視察でした。