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紫陽花(アジサイ)と小さな蝸牛(カタツムリ)2024/07/1

今年も紫陽花の咲く梅雨の季節を迎えました。この手紙でも何度か紹介した“ごんぎつね”で有名な童話作家・新美南吉の短編に「でんでんむしのかなしみ」という作品があります。

ある日、ひとりのでんでんむしが自分の背中の殻の中にかなしみが詰まっていることに気付きます。このままでは自分は不幸になってしまうと気落ちしたでんでんむしは友達のでんでんむしに悩みを打ち明けたところ、この友達は「僕の背中の殻にもかなしみはいっぱい詰まっているよ」と話してくれました・・・

もう遠い日の思い出ですが、会社が入っているビルのトイレ清掃をAさんが担当してくれていました。粕屋の方から毎日、始発バスで通勤して来ます。その手にはいつも自宅の庭で咲いた季節ごとの草花が携えられています。そしてその草花は自分が清掃担当するトイレの洗面台に飾られるのです。六月は紫陽花の出番です。ある日、私が洗面台のこの紫陽花を見たとき、葉裏に小さなでんでんむしがいることに気付きました。コンクリートタイル張りのこのトイレの中で生きていくことは難しい状況です。

Aさんにこのことを話すと、彼女は空の弁当箱に小さなでんでんむしを移して、自宅の庭へと還してくれました。小さなでんでんむしはその背中の殻いっぱいにAさんのかなしみも積み込んだのだといまも思っています。

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