社長からの手紙
仕事人のビタミン剤2023/07/1
皆さん、コロナ対策が緩和されたとはいえ、現場では蒸し暑い作業環境に入り、益々仕事疲れが増していることと心配しています。私たち裏方の仕事の仲間でもある職種の従事者(マンション管理人、警備員、ビル清掃員、荷物配送員など)による「仕事日記」というシリーズ本があります。
その一つ「バス運転手」編を読みました。このベテランのバス運転手さんは永年無事故の優良な仕事人なのですが、ある日の出来事にその誇りが打ち砕かれてしまいます・・ある老齢男性の乗客がバスを降車する際、老人パスをハッキリと提示せずに降りようとされたので運転者は「もう一度パスを確認させてください」と言ったところ、その老人はいきなり激高して「バスの運転手の分際で何様のつもりか!」と反ばくされたのです。この老人の怒りにも理由はありました。乗車するバス停で一つ前のバスにぎりぎり置いて行かれて、次のこのバスに乗るまでに15分間も待たされたのでした。この不満をこの運転手さんにぶつけたのでした。この運転手にとっては自分の責任のらち外のもらい事故みたいなものです。
しかしこの運転手さんには、この乗客からの“運転手の分際で”というナイフのような言葉が胸に深く突き刺さったのです。運転手はこの夜からこの理不尽な言葉にさいなまれて不眠症に陥ってしまい、運転の仕事を続ける気力も失いかけていました。そのようなある日の運転乗務の時、降車する幼い女の子が「運転手さん、いつもありがとう!」と一個ののど飴を手渡してくれました・・この運転手さんはこの後、定年満期退職まで無事故で運転手人生を完結されたそうです。
もう40年ほど前にこの手紙で「第1回小さな親切大賞」受賞者のことを記しました。第1回の大賞受賞者は、まさに地方のバス運転手さんでした。田舎の一軒家に住む女子中学生はこの路線バスで通学しています。冬季には部活帰路はもう真っ暗になります。この女子生徒がバス停を降りたあと、バスはしばらく出発しません。女子生徒の家に続く道には街灯もなく暗闇です。その暗闇の道を停車するバスのヘッドライトがしばらく照らし続けているのでした。