社長からの手紙
和風春巻きモドキ2020/09/1
大雨災禍をもたらした今年の長い梅雨もようやく終わったと思ったら、息つく暇もなく酷暑の日々が襲って来ました。現場はもう疲労困ぱいであろうと思いきや皆さんの元気な声を聴くことができ、むしろ私の方が元気付けられていることです。もう何十年もお盆の時候のこの手紙には、戦争のことを記して来ました。平和な時代になり小学生の遠足には手作りのお弁当が欠かせません。
この話はその楽しくあるべき遠足弁当のちょっと悲しい物語です。
終戦後何年も経て、旧満州国(現在の中国東北部:アカシアの大連の北方)から一人の残留孤児の女性が日本に戻って来ました。帰国といっても彼女は満州国生まれですから初めての母国ニッポンになります。会ったこともない遠い親戚の姪を頼っての帰還です。日本語もままならず、ましてや日本の生活習慣にも戸惑いがあり親戚宅での居場所は狭くなるばかりです。唯一、姪の子ども(又姪)がなついてくれるのが救いでした。ある日、その又姪が遠足に出かけることになったのですが、母親(姪)は仕事で不在にしなければなりません。そこで又姪になる子どもは、遠足のお弁当作りをこのおばあさん(帰国婦女)に頼みます。リクエストは定番の“海苔巻き”でした。ところが中華育ちのおばあさんには、この“海苔巻き”という和食の作り方が分かりません・・・又姪はお弁当に箸をつけることもなく、泣きはらした顔で遠足から帰って来ました。
戦争の影は、このおばあさんから二度も祖国を覆い隠しました。いまは多国籍の料理さえ好物として楽しめる平和なニッポンになりました。ここまで戦後75年間の長き歩みを続けて・・ワタシたちは。