社長からの手紙
しょっぱい旅の宿2018/10/1
いつまで続くのかと危ぶんだ猛暑も、いつの間にか秋の気配に包み込まれましたね。10月には社内懇親旅行が待っています。温泉宿でこの夏の汗を流し合いましょう。もう三十年くらい前に社内旅行で、島原の小浜温泉に行きました。いまはもう大丈夫と思いますが、当時の温泉施設は身体を洗う水栓からも塩水が出て来ました。女性軍の風呂上りは、それは見事な爆発頭髪姿で宴会が始まる前から余興大会です! この旅行に初めて参加した一人現場の女性従業員がいました。5階建ビルを一人で面倒見てくれています。その清掃控え室は屋上建屋の倉庫をちょっと改造したものでした。もちろんエアコンも通っていません。照明も薄暗く、まだモルタルの臭いが漂っている部屋(みたいなもの)でした。そこで彼女はいつもひっそりとお昼のお弁当を食べていました。私は巡回の度に何ともいえない申し訳無さを感じていました。・・・今度の旅行は島原の温泉なので参加しませんかと誘ってみると「私は長崎出身なので参加してみましょうかね」と返事があり、小浜の塩湯漬けとなったわけです。宴会も終わり、宿の窓辺から暗い橘湾の海を眺めていると、いつの間にか彼女が隣に居て静かに話しかけてきました。いつも寡黙な人でしたが、その時も独り言のような声でした。「この海の向こうは長崎市。昔、そこに大きな“きのこ雲”が昇りました。私は“そこ”に居ました。」・・・その後の彼女の人生がどのようなものであったか察するに余りあります。とても綺麗な長崎美人でしたが、頬はケロイドに覆われていました。・・・最後に「誠さん(当時は業務課長)のカラオケが聴けてよかった。女唄が似合いますね。旅行に来て、よかった。」
唄は川中美幸の♪越前岬♪でした。彼女の懇親旅行は、この塩湯の宿が初めてで最後になりました。