社長からの手紙
年輪2017/11/1
ほんの前まで晩夏の残暑に悩まされていたと思ったら、いつの間にか季節は初秋を通り越し晩秋のたたずまいに入って来ました。秋梨は食されましたか? 先日、地元新聞の投稿欄に“しゃもじ”への思いがつづられていました。そのおばあちゃんは、嫁入りしたときからもう何十年も木のしゃもじを使い続けています。美味しい御飯は、プラスチック製のしゃもじではよそおえないとおっしゃる。このごろふと気づくとしゃもじの大きさが使い込んで半分くらいになっている。そしてその木目が鮮やかに浮かび上がってきたそうだ。
わたしたちの友だちの“モップの柄”もいまではプラスチック製ですが、一昔前には木製でした。大方は軽いラワン材でしたが、60年前の創業期には、固くて丈夫なクスノキの部材で作られていたものです。そのころの清掃工事班には、体格の小柄な女性もいて、古くなった柄を短く切ってちょうどいい長さのモップに再生していました。使い込んで黒光りするクスノキの柄には、風雪に耐えて出来上がった“木目”が鮮やかに浮かび上がっていました。その小柄な女性従業員は、建築現場のモルタル粉をかぶりながらも小気味よくモップを振り続けるのでした。幼かった私は、そのおばさんたちとおやつの焼き芋を食べるのが何よりうれしかったと覚えています。