社長からの手紙
十円玉の向こう側2010/10/1
異常な暑さが続いた今夏でしたがようやく秋の足音が聞こえ始めました。猛暑の中、現場で熱中症の人が出るのではないかと心配していましたが、なんとか無事に乗り切れたようです。この10月末には年中行事の秋季社内旅行があります。今年は創業60周年祝賀会開催の関係から日帰りバスハイクは見送り、一泊旅行のみとなります。いま100名近くの従業員の参加申し込みがあっています。大型バス3台を連ねての大旅団となりますね。 60周年祝賀会に参加できなかった従業員がたくさん旅行に参加してくれればと願っています。霧島温泉郷でナンバーワン・ホスト指名を狙っているところです。60周年行事を催してつくづく感じたことは、やはり朝日ビルメン伝統の現場の誠実さに他なりませんでした。他にこれといって誇るべきものはありませんが、現場が60年にわたり綿々と受け継いできた“乳出し精神”だけは胸を張ってお得意様や同業者の社長さん方へ披露することができました。10月中旬には神奈川でアビリンピック(障害者技能競技大会)全国大会が開催されます。当社の田中保奈美さんがビルクリーニング部門の福岡県代表選手として出場します。社長としては金メダル獲得を目指して欲しいのはもちろんですが、それ以上に朝日ビルメン魂を皆さんに伝えてくれればとよいと思います。保奈美ちゃんらしさが表現されればそれ以上望むことはありません。 先日、ある知的障害児のお母さんの手記を読む機会がありました。母子家庭のため、このお母さんは障害のある娘さんを小学校に入るとき養護学校の寄宿舎に入れます。そうしないと自分が働けなくなるからでした。そうして月日が経ち、この娘さんも高校を卒業するまで大きくなりました。文具製造工場に就職も決まったので、学校側から社会生活になれるため親子で一週間ほど一緒に生活してもらいたいと要請がありました。親子は社会人としての必需用品を買うためショッピングモールへと出掛けます。そこで娘さんは化粧品売り場で足が止まります。彼女はまだ一度もメイクをしたことがなかったのです。娘心を察したお母さんは口紅を買ってやることにします。そして支払いを娘にさせました。ところが、お札の識別はできるのですが硬貨の分別がつきません。ここが大事な社会生活の実践教育の場と考えたお母さんは根気強く硬貨を選ばせます。1円玉、五円玉、十円玉、五十円玉、百円玉、五百円玉・・・「一番小さな硬貨はどれ?」娘さんは1円玉を指します。「そうそう、だったら一番大きな硬貨は?」娘さんは十円玉を指しました。「それは違うでしょ!よく考えてごらんなさい」と母は諭します。しかし娘は「十円玉が一番大事だもん」と譲りませんでした。気落ちした母は学校へ送り届けた時そのことを担任の先生に報告(愚痴)しました。先生は「娘さんにとって十円玉はこの世で一番大事な硬貨なんです。お母さん、何故だか分かりますか?・・・小学校の時から娘さんは週に一回お母さんに電話をかけていましたよね。公衆電話、10円分きりの通話。娘さんにとってお母さんと話せる一枚きりの十円玉がこの世で一番大事な硬貨なんです。」 いま60周年を迎え、朝日ビルメンの大切な十円玉を握りしめています。